老人ホームで介護の仕事を始める方は、ついつい介護作業自体のクオリティに意識が偏りがちである。しかし、入居者の視点になって考えた場合、必ずしも作業のクオリティだけが直接満足度に繋がるわけではないのだ。つまり、そこには必ず信頼関係が必要である。誰でも信頼できない人から介護されるのは居心地が悪く、どんなに作業が丁寧でも、心理的な緊張感はなくすことができない。したがって、まずは入居者との信頼関係をしっかり構築することが重要なポイントだ。この基本的なことを理解していない介護士が多く、どうしても悪循環になってしまっている。介護する側が一生懸命やっているのに、介護される側が認めてくれないという考え方になり、それが負のスパイラルとしてさらに状況を悪くしてしまうのだ。したがって、このような悪循環になっている場合は、もう一度信頼関係を見直してみるとよい。
信頼関係を築くためには、毎日のコミュニケーションを工夫することがポイントだ。適度な距離感を保ち、少しずつ距離を縮めるようにする方法が効果的である。親密になるのを急ぎすぎて、相手のプライバシーに踏み込みすぎるのは逆効果になる。一度心を塞いでしまうと、なかなか元の関係に戻るのが難しい。ある程度信頼関係が築けてきたところで、思い切って家族のように接してみる方法もある。入居者と介護士という関係ではなく、家族のような関係性になれば、さらに日頃の作業もしやすくなるのだ。